ヲトメ心と梅雨の空 〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。



このところ、日本は亜熱帯に入りつつあるのだろうかと本気で思うほどに、
降るときはそれは思い切りよく豪雨になっているような気がする。
いわゆる“こぬか雨”のような霧雨となることが珍しいというか、
そういう降りようだと大して濡れやしないと傘をさすのが面倒に思えるようになった。
そのまますぐやんでしまうだろうとか、すぐにも庇のある所へ着くしとか、
そうと思える感覚になったのは、

 「ゲリラ豪雨とか、南岸低気圧とかいうのが暴れ倒しているからでしょうね。」

降るとなったら半端ない降り方するのへ、感覚が慣れて来つつあるせいかもと、
ちょっとお行儀の悪い横向き座り、後ろの席の紅ばらさんの方を向き、
みかん色の髪、今日はまとまりがいいのをさらさら振りつつひなげしさんがそうと言い、

 「そういえば、
  昨日見たニュースでは
   “台風シーズンを前に各所の点検が行われ”なんて言われていましたわ。」

梅雨に入ったばっかりなのに、その言い方ってと思ったけれど、
もう列島に接近しそうな台風が北上しているそうですし。
これは警報とか出て学校も休みになっちゃうんじゃあないかと、
白い指先に挟んだシャープペンをパタパタと振りつつ、
そんな予想を口にした白百合さんなのへ、

「え〜〜、それは困りますよう。」

インフル流行時の学級閉鎖みたいなもので、
警報のために休みというのは外出も控えなさいという触れであり、

 「八百萬屋の売り上げに響きます。」
 「あ、それはあるかも。」

全部がそうとは言わないが、女学園の生徒さんたちも利用率が一番高い、
というか、校則が厳しい中で唯一寄り道を黙認されている甘味処なだけに、
そういう形でのお休みは堪えると言いたいらしい平八だったりする。

「だが。」
「そうだよね。
 ゴロさんにはお茶会への納品ってお得意さんがいっぱいいるのでしょう?」

町の布団屋さんややや古めかしい小さな洋品店が
何故だか潰れないのは何故かという検証番組を見たことがありますが、
その心は、近隣の学校に合宿用レンタルの布団を貸し出していたり、
洋品店の方は学校指定の制服や体操着を扱っているから、だそうで。
女学園のお供のような言い方をした平八だったが、
実は後援会やOGの皆様からのご愛顧も目出度い “八百萬屋”、
学園が長期休暇中もなかなか繁盛していてお忙しいのが実情であり。
先にそれへと気づいたらしい久蔵殿へ、
そちらは湿気のせいでやや嵩増ししている綿毛なの、七郎次がよしよしと梳いてやる。

 「そっちだって、あまりにひどい雨だと中止になっちゃうんですってば。」

 今どきの茶会なんて
 風流を味わうためというより色んな意味での情報交換の場ですからね。

 あ、やっぱりそうなんだ、と。

平八と七郎次が さもありなんという様子で頷き合い、
そんな二人を久蔵が “???”と怪訝そうに見やるのもいつものこと。
情報交換なら、イマドキのツール、携帯やPCで出来ようにと思ったらしかったが、

 「そこなんですよ、久蔵殿。
  書類や手紙の方が盗み見されやすいとか横取りされたらって思うところですが。」
 「そうそう、パスワード設定してるんだから盗み見なんて出来ないと思うらしいけど。」

ちょちょいで送れる電子書簡の方が安心だって思うのが、むしろ私には不思議ですと、
ひなげしさんが肩をすくめる。
どれほど通信法が進化しても、
直接の手渡しの方がよほどに確実、中身への信頼度も上だ。
平八が呆れて言ったように、
素人でも手軽に設定できるということは、
その道のプロには存外あっさりと侵入出来るということで。
通信会社の専門家が設定したセキュリティでも、
其処だけ特化した犯罪プロに掛かれば、それこそ片手間にでも侵入可能。

「それとは別に、此処だけの話なんだけどって種の情報もね。」
「そうそう。
 記録に残しちゃ不味いけど、親しい貴方には特別に教えてあげるって話とか。」

電子書簡はどう削除したって痕跡が残るので、
誰が誰へリークしたかは時間さえ掛ければ結構あっさり辿れてしまう。
なので、何も残らない肉声で 直接話すというやり方で伝えるという手もいまだに健在なのである。

 「ともあれ、今日は何とか保ちそうで良かったですね。」

窓辺の席から見渡す空は、雲も少なく陽射しも強め。
口では厄介という言い方をしているお嬢様がただが、
これでアスファルトを蹴立てて降りしきる驟雨も
蒼穹を断ち割る雷光も雷鳴も、
血沸き肉躍る要素でしかないという困った勇敢女史なのだ。
 *『
ヲトメ心と 秋嵐?』参照

「あらあら純心と言ってほしいですわ。」
「そうですよ。雪が降るのが楽しくってしょうがない童と同じvv」

う〜ん、それはどっかで次元が違う。
この人たちの場合、激しい雨脚で多少騒いでも気づかれないとか、
雪なら雪で、あとでかぶせとけば発見が遅れるとか、
およそどっちが正義の側か判らない要素にしちゃいそうで。

「……失礼な。」
「そ、そうですわ。そのようなことは。」
「……。(頷)」

何を言葉に詰まっているのかな?(まったくもう)
とりあえず、人的被害は…頑張って防衛していただくとして
梅雨早々から災害レベルの天候にはならないことをお祈りします。




   〜Fine〜  18.06.09.


 *中身がおサムライ様ですんで、
  豪雨や雷なんて一向に怖くはない、困ったお嬢様たちなのも相変わらずです。
  台風並みの大雨も、むしろ“掛かって来んかい”対象だと思われます。

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